見事にリフレッシュされていたガンバ大阪


Jリーグも残すところあと5試合。
その中から、今日は優勝への生き残りをかけた浦和レッズと、
ナビスコカップをあと一歩のところで逃し
さらには過密日程によるコンディションも心配されるガンバ大阪との一戦を取り上げます。

スタメン

ガンバ
 FW:アラウージョ、大黒
 MF:フェルナンジーニョ(トップ下)
    二川、渡辺(両サイド)
    遠藤、橋本(ボランチ)
 DF:實好、宮本、シジクレイ
 GK:藤ヶ谷
レッズ
 FW:マリッチ
 MF:ポンテ(トップ下)
    サントス、永井(両サイド)
    長谷部、酒井、山田(ボランチ)
 DF:堀之内、トゥーリオ、坪井
 GK:山岸

試合の流れ&寸評

(今回は志向を変えて、試合の流れを説明しながら随時コメントを交えていきます)

前半

立ち上がり、やや重さを感じるガンバ。
これに対しレッズはやや飛ばし気味に入る。
左サイドのサントスを起点とした攻撃を展開、何度かクロスボールまでは行く。
しかしいかんせんレッズは中の選手が少ないため、決定機は作れず。
10分ごろにもなるとガンバの選手の動きから重さが取れ、
それと同じくしてサントスの攻撃も影を潜める。
前半の立ち上がりで一度勝負に行っていただけに、
レッズはもっと積極的に後方からの攻撃参加が欲しかった。
ここで押し込めないのが、結局後々響くこととなる。
 
この後のボール支配率は五分五分といったところ。
ともに堅守速攻を目指しており、
それがうまくはまるとシュートまで持っていけるが
遅攻となると相手が引いてしまい、崩せないでいた。
そんな中迎えた29分、
フェルナンジーニョが中盤前目でアラウージョからのワンツーをドリブル。
スルリ、スルリと入り込んでいくと、
最後は坪井を見事なドリブルでかわしゴール!
なにげない形から、あっという間にゴールを奪ったのである。
とはいえ、このゴールの前兆がないわけではなかった。
レッズは中盤の守備を厚くするため3ボランチに。
しかしこれが反ってあだとなっていた。
というのも、人数は足りているのだが、ひとりひとりのマークが甘い。
さらにはマークの受け渡しまで曖昧なので、
ドリブルで出てこられると誰が当たりに行けばいいのかはっきりせず。
このゴールも、
フェルナンジーニョがPA内に入ってきたところで始めて坪井がマークに行っていた。
しかし、リズムよくスピードに乗った相手を止めるのは大変なこと。
実際、フェイントにまんまとはまってしまったのである。
この間、レッズの他の選手は見ているだけ。
さらには、カバーにいくべき中央のトゥーリオ
坪井と一緒にフェイントに引っかかっているのだからどうしようもない。
確かにフェルナンジーニョのドリブルも見事であったが、
もっと早めに複数で囲みに行っていればふせげたであろうだけに
もったいないという印象を受けた。
 
この後もガンバペースは続く。
というより、レッズの攻撃が悪すぎたといったほうがよい。
ガンバの前3人を警戒するあまり、マリッチとポンテを残しあとは全員引き気味に。
守備意識、というよりも恐怖感が強すぎるためか、
ボールを奪ってからの攻撃への切り替えが遅すぎる。
なかなか押し上げてくれないため、
前線のマリッチとポンテは完全に孤立。
マリッチマンマークの強いシジクレイに、
そしてポンテはガンバ中盤のプレスにことごとくつぶされていた。
1トップ&トップ下というフォーメーションを使う以上、
攻撃の際に後方からのフォローは必要不可欠。
それなのにタイミングよく上がってくる選手といえばトゥーリオばかり。
これでは攻撃にならないし、そもそも攻撃のリズムすらつかめない。
その象徴がポンテの苛立ちから来るイエローであるし、
前半終了間際の決定機でマリッチが決めきれないところへも影響している。
そして試合はハーフタイムへ。

後半

立ち上がりからレッズがガンガン飛ばしてきた。
確かにこの試合を勝つとなると、後半のなるべく早い時間帯で追いついておきたい。
ハーフタイムにブッフバルト監督から指示があったのであろうが、納得の采配である。
全体的に前がかりとなって攻めるが、
レッズの中でとりわけ光るプレーヤーがいた。
それは司令塔のポンテである。
彼がボールを持つと可能性を感じた。
司令塔としてパスが出せるだけでなく、ドリブルにもキレがある。
昨シーズン、チャンピオンズリーグ決勝トーナメント、
レバークーゼンvsリバプールでスタメンを張っていただけのもうなずけた。
1試合を通して彼を見たのは初めてだったが、本当にいい選手を取ったものだ。
自ら走り込んでのプレーもできるため、今のレバークーゼンのチーム状況を思うに
放出してしまったのを後悔しているのではなかろうか。
ポジション柄地味な印象があったが、
彼を見るがためだけにスタジアムに足を運ぶ価値すらある。
 
さて話を試合に戻すとしよう。
流れは完全に、攻めるレッズに守るガンバという構図に。
これは結局、試合終了まで変わることはなかった。
前半にも少々触れたが、
いずれも速攻ならいいが、遅攻となるといまいち。
これは後半になったからといって変わることはなく、レッズは案の定攻めあぐねる。
ガンバを見てて気づいたのは、
守備時になると両サイドがしっかりと戻ってディフェンスをしていた。
しかもその守備が、サントスなどと異なりしっかりと様になっている。
だからDFの3人は安心して中で待ち構えることができ、
さらには2ボランチがうまくバランスを取ってスペースを消していた。
こうとなってはいくらポンテが頑張ろうとも、それだけでは崩せない。
こういうときこそ、
相手のディフェンスをずらすためにもサイドでのドリブル突破が欲しいし、
また後方の選手の思い切ったオーバーラップが欲しかった。
しかし、両サイドのサントス、永井の切り込みはいまいちだし、
上がってくる選手といえばトゥーリオばかり。
せっかく3ボランチにしているのだから、
もっと積極的に上がり、どんどんミドルレンジからゴールを狙ってほしかった。
引いた相手を崩すには、この2点しかあるまい。
(こういう状況は、ワールドカッププレーオフでも多々見られるのではなかろうか。
 その際には、特にミドルシュートの精度のよさに注目していただきたい。)
 
なんとなくレッズがボールを支配するも攻め切れない。
こんなレッズにとって嫌な雰囲気のまま、時間だけが刻々と過ぎていく。
耐えかねたギドはボランチを1枚削り、FWで高さのある横山を投入。
またトゥーリオもほとんど上がった状態となり、
中の枚数を増やし半ばパワープレーに出る。
しかしそれでもいいクロスがあがらず、ことごとくガンバディフェンスに弾き返される。
特にシジクレイの強さはナビスコでも目の当たりにしたが、この日も冴え渡っていた。
またあまり目立たないかもしれないが、宮本の跳躍力の高さも追記しておきたい。
 
もう、セットプレーでしか可能性がないのではなかろうか?
後半も30分を過ぎ、同じことを繰り返しているばかりで
攻めあぐねているところを見るにそう感じた。
そのためには、つっかけてファウルをもらう選手がいればなぁ…。
そう思っていると、
38分、トゥーリオの変わりにDF中央に入っていた長谷部に代わり岡野を投入。
そうするとDFラインはどうなるんだ?と思いつつも、ドリブラーである岡野に淡い期待。
が、心配していたほうがズバリ当たってしまった。
レッズディフェンスが薄くなったところを見事にアラウージョに突かれ2−0に。
この局面、3対3と数的不利にはなっていなかったのだが、
レッズの3人とは、坪井、サントス、岡野…。
これでリーグ1の破壊力を誇るガンバ3人衆を抑えられるわけがない。
ギドの気持ちも分からないでもないが、
ミドルのある長谷部は残したまま、ポジションを前目に修正すればよかっただけではなかろうか。
 
この時間帯での1点で、ガンバはかなり有利に。
あとはレッズのセットプレー待ち。
しかし2点(3点?)はさすがにきついよなぁ。
そう思い見ていた。
すると失点からまもないうちに、いい位置でポンテがFKを獲得。
やはり、ドリブルでつっかけたところから始まっていた。
そしてこの場面、今日は当たっており一度惜しいシーンもあったサントスが見事に決める。
これはキッカーが見事であったと誉めるべき。
 
残りは5分+ロスタイム。
レッズの攻勢は相変わらず続く。
しかし、こう着状態も相変わらず。
CKから惜しい場面が何度かあるも、ここはガンバGK藤ヶ谷がナイスセーブ。
このまま試合は終わったのであった。

マン・オブ・ザ・マッチ

藤ヶ谷
→何度か好セーブを見せ、レッズの攻勢をしのぐ。

その他の目立った選手

フェルナンジーニョ
→相手を手玉に取るドリブルで格の違いを見せ付ける。
ポンテ
→レッズ攻撃陣の大きな核となっていた。
トゥーリオ
→攻撃参加のタイミング、空中戦での強さはDFにしておくにはもったいないくらい。

総括

今回は今までとは異なる形で書いてみた。
思うところはほとんど試合の流れに織り込んだので総括は簡単に。
ガンバのメンバーは、土曜・水曜と2試合連続して延長戦まで戦った疲れを
感じさせない動きだった。
後半も終盤になるとバテてくるのでは?と思っていたが、そんなことは微塵も感じず。
むしろ、終始集中したゲーム運びをしていた。
ナビスコカップ決勝での敗戦のショックがあるかと思いきや、
逆にあの敗戦を糧としてチームが一回り成長しているようにすら感じた。
勝つべくして勝ったといえよう。
 
全体の中から目を引いたのは両サイドのプレーヤー。
攻撃参加はもちろんのこと、守備にもよく動き回っており、
これぞサイドプレーヤーといった働きを見せてくれた。
彼らの運動量なくして、ガンバの守備はないといえよう。
ガンバといえば前線の3人やDFラインに目が行きがちだが、
両サイドの働きがガンバの隠れた生命線に見られた。
これはできることなら、西野監督に聞いてみたいぐらいだ。
 
一方のレッズ。
なにかやってくれるのではと期待していただけに残念だった。
天皇杯を終わってからたっぷり準備期間があっただけに、
役割が曖昧だった3ボランチは特に残念。
あれならば始めから前線のFWを2枚にしたほうが、
もっとポンテを生かせたであろう。
今日のレッズは、
ガンバのスタイルを消すことから始まったよそ行きのサッカーに感じた。
勝たなければならない試合だったのだから、
もっと思い切って前半から攻撃的な布陣で臨んで欲しかった。
 
経験不足のガンバがこけると見ていたこの試合。
しかし、フタを開けてみると見事な試合展開であった。
ナビスコカップの敗戦が、いい方向に作用したようだ。
このままガンバが突っ走ってしまうかもしれない。
そうとすら感じさせた一戦であった。