危なげない試合運びをしたバルセロナ

アウェイでのアドバンテージを守りきる。
これを合言葉に始まったかのような試合。
結局、この静かなる闘志のまま試合終了となりました。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/headlines/20060308-00000011-spnavi-spo.html

チャンピオンズリーグの準々決勝進出を果たし、バルセロナフランク・ライカールト監督は興奮した様子でコメントした。
「選手たちは大きな仕事をしてくれた。チェルシーという非常に危険なチームが相手だったが、真剣な姿勢で困難を克服した。最後まで集中力が途切れず、戦術面でのいくつかのミスを除けば完ぺきだった。うまく相手を抑えてくれたDF陣に感謝しているが、それだけではなく選手とサポーターの全員に礼を言わなければならない」

結果

バルセロナ1−1チェルシー
ゴール:78分ロナウジーニョ、90分ランパード
バルサメンバー
FW:ロナウジーニョエトー、メッシ(25'ラーション
MF:モッタ、デコ、エジミウソン
DF:ファン・ブロンクホルストプジョルマルケス、オレゲー
GK:ビクトル・バルデス
チェルシーメンバー
FW:ドログバ(59'クレスポ
   ダフ(59'グジョンセン)、ロッベンジョー・コール(83'フート)
MF:ランパードマケレレ
DF:ギャラス、テリー、リカルド・カルバーリョパウロ・フェレイラ
GK:ツェフ

試合総括

機能しなかったチェルシーの4−2−3−1

チェルシーはこの試合、ウィング3人を並べるという形の布陣を取ってきました。1stレグでよかったロッベンはあえて中央に配し、左にダフ、右にジョー・コール。しかし、これが全く機能せず。その理由は大きく次の2点。
?攻撃型の選手ばかりで中盤の守備が手薄となってしまい、得意の相手ボールを奪ってからのカウンターに持ち込めなかった
?前4人が必ず攻撃参加してしまうため、ランパードは守備をある程度ケアせざるをえず、また上がっていくスペースがあまりなかった
3人のウインガーは、ポジションチェンジこと多少はあるものの、誰かがおとりとなってスペース作りをし、他の誰かがそこに走りこむといった動きはほとんどなし。これでは逆に攻撃陣が硬直的になってしまい、バルサにしてみれば守りやすかったでしょう。
共に、チェルシー本来の特徴である、中盤での厳しいプレスからのカウンターを消す方向に働いてしまいました。是が非でも2点取らなくてはならない状況、これがチェルシーを追い詰めていたのは間違いありません。
また、4バックの両サイドもあまり上がれませんでした。これも、攻撃に厚みができない原因に。その理由はそれぞれのサイドごとにあります。
左サイド:サイドバックには、あまり攻撃ができないギャラスが入っていた
右サイド:ロナウジーニョが気になってしまい、上がっていけなかった
守備のいいギャラスロナウジーニョに当てて、逆にメッシがいなくなった左サイドでパウロ・フェレイラを使えばオレゲールのところを突けたと思ったのですが、そういう考えはなかったのでしょうか?ここは、モウリーニョに聞いてみたいところです。また、もしここがデル・オルノだったらまた違ったのでしょうね。そういった意味でモウリーニョは、1stレグでの退場を今になっても憂いているのかもしれません。ただ、冬のマーケットでブリッジを出してしまったことも影響していたのではないでしょうか。

キープ重視だったバルセロナ-幅4mの差は大きかった-

スタンフォード・ブリッジに比べ、横幅が4mほど長いカンプ・ノウ。さらにピッチ状態は最高。このためロナウジーニョの個人技、特にキープ力が光っていました。それと、忘れてはならないのは、デコの球を落ち着けるプレーとファウルをもらううまさ。彼らの働きにより、試合のリズムはバルサへ。チェルシーはプレスをかけようとするもののかいくぐられてしまう。そんな展開となりました。
特に前半のバルサはセーフティーファーストでロングボールを多用。無理しない戦い方をしていました。そんな中、チェルシーはペースをつかめず。特に中盤での組み立てがほとんどありませんでした。あれだけドリブラーをそろえれば、どうしてもみんな持ちたがってしまうのは仕方ないと思いますが。バルサウインガー対策をきっちりとしていたようで、ボールホルダーに対し、すぐ2人、3人と寄せるよう。ボールの落ち着かせ役が不在のチェルシーは、珍しくミスパスも連発。相当、苦しかったんだと思われます。タメも作れる司令塔役がいれば驚異的だったとは思いますが、あのメンバーでは精一杯だったのではないでしょうか。

最後までバルサの攻撃を恐れたモウリーニョ

この試合、2点を取らなければならなかったチェルシー。前半無得点に終わった時点で、後半は大幅なシステム変更をしてくるだろうと思っていました。球周りをよくするため、3ウインガーはないだろうと。が、後半もメンバーどころかシステムまで全く同じもの。モウリーニョは、それだけあのシステムにかけていたのでしょうか?が、案の定、後半も機能せず。耐えかねて後半14分に選手交代するものの、システムは変えず。ドログバに代えクレスポを、ダフに代えグジョンセンを投入。が、なんの変化もありません。相変わらず機能せず。ここまでシステムが機能しないチェルシーも珍しいのではないでしょうか?残り時間が少なくなると3バックでの勝負に出てくると思っていたのですが、それもなし。おそらくは、バルサが両サイドを幅広く使ってくるのを最後まで恐れていたのでしょう。実際この日のバルサはいつものようにサイド攻撃を多用していましたし、チェルシーはそれを止められないでいました。が、リスクを侵してでも勝負に出るべきだったのでは?正直、この日のチェルシーからはあまりこの試合にかける気迫が感じられませんでした。
残り時間が10分を切ると、ウイングのジョー・コールに代えなんとCBのフートを投入。パワープレー狙いかと思うも、さほどロングボールを使わず。チームとしての意図が見えない、なんとも中途半端な3人目の交代となりました。それにクレスポ投入時にドログバを下げてしまっていたため、これしか策なし。正直、終盤はパワープレー気味にならざるをえない展開だっただけに、そもそもドログバを下げた理由が分かりませんでした。というのも、この日のドログバはある程度制空権を握っていましたし、当たり前のことながらCFとしての攻撃センスがありましたから。それだけ、4−2−3−1にかけていた、といえばそれまででしょうが、その後の柔軟性に欠けていたように思われました。いずれにせよ、これで完全にチェルシーの攻撃はバラバラに。確かに最後にPKを与えていますが、あれはファウルではなかったですし、ロスタイムも残り1分を切ったところでのこと。いい手土産といった感じでしょう。バルサは、終始危なげのない試合運びをしていました。

マン・オブ・ザ・マッチはデコ!

この試合、最も目立っていた選手はロナウジーニョでしょう。華麗なプレー、持ち前のスピードと強靭な肉体から生まれたゴール。皆の目を引いたと思います。が、この試合の影の立役者はデコ。さきほども挙げたとおりマイボールを落ち着けていましたし、また守備の局面でも、せいぜいイエローカードには決してなりえない程度のファウルで芽を摘んでいました。(始めからファウルをしようとしていたわけではありません。)
 
と、ここで時間切れです。
なにはともあれ、バルサはよくやりました!
これであのスタンフォード・ブリッジでの記憶からもさよなら。
このままの勢いでビッグイヤーを獲得していただきましょう!